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2017年7月

2017年7月28日 (金)

川崎市教委のサマーキャンプは旅行業法上、何ら問題ない

今夏,川崎市教育委員会等でつくる実行委員会主催のサマーキャンプをはじめ,地方自治体が行う子ども向けの自然体験活動が旅行業法に違反するとして中止される事例が複数発生しています。
いずれも,主催者が旅行業法3条に基づく登録を受けていない点が問題とされています。

旅行業法3条は,次のような条文です。

(登録)
第三条   旅行業又は旅行業者代理業を営もうとする者は、観光庁長官の行う登録を受けなければならない。

この「旅行業」は、同法2条1項で定義されており、①「報酬を得て」②一定の行為を行う③事業をいう、とされています。この②の行為は、具体的には旅行の行先や日程、旅行中の交通機関や宿泊施設を決め、料金を設定して参加者を募集する一方、交通機関や宿泊施設を確保するという、いわゆるツアー会社のパックツアーなどが定められています。
旅行業法は、もともと旅行の手配をすると称してお金を受け取り、持ち逃げをしたり不当に高額なマージンを取ったりする悪徳業者を取り締まりために制定された法律ですから、シンプルにいえば、不特定又は多数の人に参加を呼び掛けてお金を集め、旅行の手配(交通機関や宿泊施設の手配)をすることを繰り返していると、完全に実費精算となっていない限り、「旅行業」に該当する可能性はかなり高いといえます。
そして、今回のサマーキャンプも、市内の子どもたちに呼びかけて参加費を集め、交通手段や宿泊施設を手配するのを毎年繰り返していたようですから、「旅行業」にあたる可能性は高いでしょう。

行政機関のウェブサイトでも、旅行業を「行う」には登録が必要などと書いているところもありますが、法律には「営もうとする者」と書いてあります。
実は、旅行業を「行う」と「営む」は意味が違う、というのが裁判所の見解です。
高松高裁平25.1.19判決は、旅行業法上の登録をせずにバイクツアーを主催したことが旅行業違反であるとして問題になった事件ですが、この判決では「旅行業に該当する行為を営むとは、営利の目的で、旅行業に該当する行為を行うことをいう」との判断が示されており、旅行業を行う場合でも、営利目的がなければ登録義務はないとされています。

市教委等が行うサマーキャンプに営利目的があるとは考え難く、旅行業者として登録していなくても、実施することに問題はありません。

このような問題が広がった背景には、観光庁の通達である旅行業法施行要領に、「国、地方公共団体、公的団体又は非営利団体が実施する事業であったとしても、報酬を得て法第2条第1項各号に掲げる行為を行うのであれば旅行業の登録が必要である。」(第1の1の2)との記載があるためと思われます。
この記載を読むと、非営利団体まで明示されている以上、営利目的の有無によらず登録義務があるというように解釈でき、実際、そのように解説している困った弁護士もいます(※)。

※https://www.mc-law.jp/kigyohomu/24416/

当職としては、旅行業法施行要領を改正する必要があると考えています。7月25日、自然体験活動の推進に熱心な衆議院議員に陳情し、そのまま観光庁で担当者に高松高裁判決を示して対応を求めました。
翌26日にも、別の自然体験活動の推進に熱心な衆議院議員の事務所で陳情させていただきました。

そうしたところ、本日、営利目的がなければ問題がないという通知が発出されたようです。

※http://www3.nhk.or.jp/news/html/20170728/k10011078661000.html

営利目的がなければ旅行業法の規制対象ではありませんから、ボランティアツアーが名簿を提出するなどした場合に「特例」で認めるというのは変な話なのですが、肯定的な内容のように思えます。

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