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2017年11月

2017年11月30日 (木)

無賃乗車と逮捕(別件)

先日,キセル乗車と逮捕について書きましたが,今度は無賃乗車した本人が逮捕されました。

品川駅(東京都港区)から博多駅(福岡市博多区)まで新幹線に無賃乗車したとして、福岡県警は29日、住所不定、無職の男を鉄道営業法違反(無賃乗車)の疑いで逮捕し、発表した。「間違いです」と容疑を否認しているという。
博多署によると、男は29日、JR品川駅から東海道・山陽新幹線のぞみ号に乗り、運賃を支払わずに博多駅まで乗車した疑いがある。
博多駅到着前、車掌が車内改札で男が切符を持っていないことに気づき、精算するよう求めたが黙ったまま応じなかったため、博多駅を通じて警察に通報した。「品川では改札口を突っ切った。新幹線に乗りたくなった」と話しており、所持金は10円だったという。(朝日新聞17.11.30付)

先日書いた通り,鉄道営業法違反(無賃乗車)だけで逮捕されることは例外的なのですが,今回の男性は「住所不定」だったため,逮捕が可能なパターンでした。

ところで,無賃乗車が詐欺になるには,人間を誰か騙す必要があるのですが,今回は「改札口を突っ切った」そうですので,どうやって突っ切ったのかは別として,駅員さんを騙したといえるかは微妙です。
また,車掌さんにニセモノの切符を見せたとかいった事情もありませんから,車掌さんを騙したとはいえないでしょう。
そうすると,この男性は詐欺にならない可能性も十分ありそうです。
方法次第では詐欺(未遂)罪もありえますから,どうやって「改札口を突っ切った」のか,気になります。

2017年11月25日 (土)

キセル乗車と逮捕

アイドルファン仲間の「キセル乗車」を手助けして逮捕された件がニュースになっています。

アイドルファン仲間の「キセル乗車」を手助けしたとして、警視庁は、私立大学3年の男を建造物侵入の疑いで逮捕し、24日発表した。「今までに150回くらいやった。追っかけファンのネットワークがあり、キセルの手助けができる人は全国に数百人いる」と述べているという。
保安課によると、逮捕容疑は9月17日午後1時すぎ、知人=鉄道営業法違反(無賃乗車)容疑で書類送検=の無賃乗車を手助けする目的で入場券2枚を購入し、JR東京駅構内に侵入したというもの。2人はアイドルグループAKB48やHKT48のファンで、共通のファン仲間を通じて知り合ったという。
知人は岡山駅の改札を入場券を使って通り、新幹線に乗車。東京駅で降車して大学生の男と落ち合い、男が購入した入場券を使って改札を出ようとしたが、駅員が気づき、キセルが発覚した。

(朝日新聞17.11.24付。ブログの記事のほうが長く残るので年齢と住所は削除)

無賃乗車も岡山~東京間だとかなり高額になりますし,まして無賃乗車を助けるネットワークを作っていたとなるとかなり悪質ですから,他の仲間への警告の意味もあって逮捕して発表したのでしょう。

ところで,無賃乗車した本人と,手助けした仲間ではどちらが悪いでしょうか。
両方悪いのは当然ですが,無賃乗車に限ってみれば無賃乗車で利益を得たのは本人であって,仲間は捕まるリスクがあるのに特に利益を得ていませんから,本人の方が悪そうです。
法律用語で,犯罪を自ら実行する人を「正犯」,正犯の犯罪を幇助(「ほうじょ」。手助けの意味)するだけの人を「従犯」といいます。
従犯の方が基本的に刑は軽くなります(刑法62条,63条,68条)。

・本人→無賃乗車の正犯
・仲間→無賃乗車の幇助[従犯]

しかし,今回は少し様子が違います。

・本人→鉄道営業法違反(無賃乗車)で書類送検
・仲間→建造物侵入で逮捕・公表

無賃乗車には鉄道営業法29条でちゃんと罰則がありますが,実はその刑罰は50円以下の罰金又は科料となっています。
「えっ?無賃乗車しても罰金50円で済むの!?」と思ったら大間違い。
古い法律で罰金の額が見合わない刑については,罰金等臨時措置法という法律が用意されており,罰金の最高額が2万円未満の場合は,最高額が2万円に引き上げられています。
それでも2万円以下の罰金となると,住所不定でない限り,原則として逮捕されません(刑事訴訟法199条1項)。
無賃乗車した本人は,逮捕もされないわけです。

それに対して,建造物侵入は3年以下の懲役又は10万円以下の罰金となっており,決まった住居があっても逮捕できますから,今回は本人ではなく仲間が逮捕されてしまったわけで,ちょっとバランスが悪い気もします。

・本人→2万円以下の罰金又は科料
・仲間→3年以下の懲役又は10万円以下の罰金

もっとも,無賃乗車は駅員さんや車掌さんをうまく騙さないと途中で発覚してしまいますから,今回の場合は詐欺罪(10年以下の懲役)にあたる可能性が否定できません。
鉄道営業法違反に比べると,誰をどうやって騙したのか特定する必要があるため,とりあえず鉄道営業法違反にしてあると思われますが,詐欺罪になれば罰金では済みませんし,罰金刑でも犯罪として前科になりますから,絶対に無賃乗車はやめましょう。

※無賃乗車が詐欺にあたるかどうかに加え,仲間の行為が本当に建造物侵入にあたるのか,ならば本人はなぜ建造物侵入ではないのか,といったあたりも法律的には興味深い論点ですが,今日は時間がないので割愛します。

2017年11月 9日 (木)

選挙とお茶・コーヒー

解散・総選挙ということになってから突然忙しくなってしまい,しばらく更新していませんでした。

総選挙も終わったところで,私は弁護士の前は代議士秘書(政策秘書)をしておりましたので,選挙のこぼれ話も少し書いておこうかなと思います。

今日のテーマは選挙とお茶・コーヒー。
選挙事務所では,お客さんにお茶を出すことはできても,コーヒーは出してはいけない,ということになっていることをご存知でしょうか。
気になる候補者がいて,選挙事務所に顔を出したとき,出されたお茶を飲むのはOKですが,コーヒーが出されたら飲んではいけません。お酒はもちろんダメです。


選挙に際して,いわゆる「買収」が違法であることは皆さんご存知だと思います。
当然,選挙にかかわるスタッフも,少しでも心掛けのある事務所であれば,一緒に食事をしても割り勘を徹底しています。

「買収」は公職選挙法221条1項に規定があり,1号の

「当選を得若しくは得しめ又は得しめない目的をもつて選挙人又は選挙運動者に対し金銭、物品その他の財産上の利益若しくは公私の職務の供与、その供与の申込み若しくは約束をし又は供応接待、その申込み若しくは約束をしたとき」

など,6つの行為のいずれかに該当すると,懲役刑・禁錮刑(いずれも3年以下),罰金刑(50万円以下)を科されることがあります。
なお,買収をした人が候補者であった場合や多数の人を買収した場合など,さらに刑が重くなることもあり,さらに買収で受け取った金銭などは没収されます(同法224条)。

これに関して,公職選挙法139条は「飲食物の提供の禁止」を定めており,

「選挙運動に関し」「飲食物(湯茶及びこれに伴い通常用いられる程度の菓子を除く。)を提供すること」

を禁止しています。
例外は,上のカッコ内にある「湯茶及びこれに伴い通常用いられる程度の菓子」と選挙運動員に対する弁当(ただし数量限定)だけです。

単に事務所に顔を出しただけであれば選挙運動員ではありませんから,飲食できるのは「湯茶及びこれに伴い通常用いられる程度の菓子」に限られます。
そして,お茶はこの「湯茶」に含まれますが,コーヒーは「湯茶」に含まれないと解釈されています。
さらに,「菓子」もなんでもいいわけではなく,「これに伴い通常用いられる程度の」とありますから,お茶請け程度のものに限られるということになるのです。


そうしますと,お茶を出すのは適法,コーヒーを出すのは違法となります。

そして,事務所の方はお客さんに,1票入れてもらいたい,又は友人・知人に投票するよう声をかけてもらいたいと考えて接待するのが通常でしょうから,コーヒーを出した事務所の方は公職選挙法221条1項1号の「当選を…得しめ(る)…目的をもつて選挙人…に対し…物品…の供与、その供与の申込み…をし又は供応接待、その申込み…をしたとき」にとして買収罪にあたる可能性が高いといえます。

お客さんの方も要注意です。公職選挙法221条1項4号には

「第一号…の供与、供応接待を受け若しくは要求し、第一号…の申込みを承諾し…たとき」

とありますから,買収を受けた人も,買収した人と同様に処罰されてしまう可能性があります。
したがって,お客さんの方も,コーヒーを飲んではいけません。
付け加えると,「要求」も処罰対象ですから,選挙事務所でコーヒーをくれとか,ジュースをくれとか,お菓子にケーキを出せとか要求することもダメです。

コーヒー1杯で警察が現実に検挙するかはわかりませんが,法律上はダメですから注意してください。

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