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2018年2月 9日 (金)

手を洗う時間も労働時間です(ラーメン屋さんとタイムカード)

先日、昼食を食べに事務所近くのラーメン屋さんに入りました。
注文した後店内を見回していると、厨房の入り口に置いてあるパソコンに

「打刻は業務中!身だしなみ整え 手指消毒後」

と貼ってありました。

しかし、手指消毒をする時間は労働時間ですし、身だしなみについてもエプロンをつけるなど業務上必要な部分は労働時間となりますので、出勤のタイムカードを打ったあとしかお給料を払っていないとすれば賃金の一部が未払い(違法)となります。

「労働時間」はお給料が払われる時間ですが、どこまでが「労働時間」に入るのかをめぐって裁判所で争われた事例はたくさんあります。最も基本的な判例が三菱重工長崎造船事件です。

①労働基準法32条の労働時間とは、労働者が使用者の指揮命令下に置かれている時間をいい、右の労働時間に該当するか否かは、労働者の行為が使用者の指揮命令下に置かれたものと評価することができるか否かにより客観的に定まるものであって、労働契約、就業規則、労働協約等の定めのいかんにより決定されるべきものではない
②労働者が、就業を命じられた業務の準備行為等を事業所内において行うことを使用者から義務付けられ、又はこれを余儀なくされたときは、当該行為を所定労働時間外において行うものとされている場合であっても、当該行為は、特段の事情のない限り、使用者の指揮命令下に置かれたものと評価することができ、当該行為に要した時間は、それが社会通念上必要と認められるものである限り、労働基準法上の労働時間に該当する
(最高裁判所平成12年3月9日判決民集第54巻3号801頁)

ざっくり言えば、労働者の行為が会社に言われたから行っているといえる場合は労働時間である、出勤後に着替えや手洗いなどをしないといけないなら、それは原則として労働時間ですよ、といっているわけです。

ラーメン屋さんなどの飲食店では、出勤後にエプロンを付けないといけませんし、手を洗わないといけません。エプロンを着て通勤したり、手を洗わずに仕事を始めるのは衛生上問題がありますよね。
したがって、身だしなみを整える時間(エプロンを着るなど業務上必要なもの)、手指消毒の時間は、いずれも労働時間となりますので、賃金が支払われることとなります。

私が行ったラーメン屋さんは、エプロンを着て手を洗って消毒をしてから、出勤のタイムカードを打刻するルールにしています。シールを見る限り、おそらくこのラーメン屋さんはタイムカードを打刻してからの賃金しか払っていない(エプロン着用や手を洗う時間の賃金を払っていない)とみられます。
せめてエプロンを着て手を洗うのに必要とみられる合理的な時間を、タイムカードで計算された勤務時間に加算して賃金を支払うべきでしょう。

なお、衛生面からみると、パソコン(のキーボード)をちゃんと消毒しているならいいですが、そうでないとするとせっかく手を洗って消毒したのに、清潔ではないパソコンを触ることになります。
また、手を洗う時間について実時間に応じた賃金が支払われないとすると、さっさと適当に手を洗って済ませてしまうのではないか、という懸念も生じます。

いずれにせよ、飲食店として衛生面を考慮すれば、出勤の打刻をしてから、ちゃんと手を洗ってもらう(あまりに長く手を洗っている場合は上司が注意して止めさせる)ことで、法律をきちんと守り、かつ、お客さんにも安心して利用してもらえるのではないでしょうか。
エプロンを着て手を洗う時間はせいぜい数分です。それをあえて法律違反かつ衛生上問題のある方法でケチるよりも、もっと節約できるところはあるはずです。